失敗しないISO構築法(その1)―ISO-MSを理解しよう
これからISOの認証を取得しようとする場合,まず,なにをすればよいのでしょう。
おそらくほとんどの人は,本を読んだりセミナーを受講したり,場合によってはすでに取得している会社に見学に行ったりするのではないかと思います。
これから取り組むものがどんなものなのかを知らないことには始まりませんから,これは当然のことですよね。
でも,気を付けるべきポイントがあります。
本やセミナーの注意点
多くの人は「これから何をしたらよいのか」を知りたいので,ISOに書かれている「~しなければならない」というISOの要求事項について勉強しなければと思うでしょう。
確かにISOは「どのような国のどのような規模のどのような種類の組織にも適用できるように」書かれているので,パッと見ではなかなか理解しづらい文章になっています。
ある組織では適用できても別の組織では適用できない,といったことのないように漠然とした表現が多いのです。
そのためISOを読んでみても「具体的に何をすればいいの?」ということがなかなか浮かんできません。(※1)
※1:私も初めは「これは日本語か・・・?」という印象でした(笑)。正確にはISOではなくJISですが。
そこで皆さん,解説書を買って読んでみたり,ISO解説セミナーにようなものを受講したりするわけです。
でも,以前の記事「ISO-最初にやるべきこと」にも書いたように「マネジメントシステムとは何か」を理解してからでないと,要求事項を解説されても(本を一冊読んだりセミナー1回受講したくらいでは)「具体的に何をすればよいか」はなかなか見えてこないものです。
もし「マネジメントシステムとは会社をちゃんと運営していくために必要な仕組みやルール」ということがわかっていれば,本やセミナーの「要求事項の解説」もすんなり頭に入ってくると思います。
そしてISOは「マネジメントシステムのお手本」に書いたように「お手本」だと理解していれば,自分の会社の仕組みやルールすなわち「自分の会社のマネジメントシステム」とISOの要求事項を比べて,足りないところや弱いところを補完したり補強したりすればいいんだな,ということが理解できると思います。
ですから参考書やセミナーを選ぶときは「要求事項の解説」だけでなく「マネジメントシステムとは何か」についてページや時間を割いて説明してくれているかが大事です。
本を読み終えて,セミナーを受講して「ほとんど要求事項の解説だけだったな」というのであれば,知識としては不十分なので,別の本を読むなりセミナーを受講するなりが必要かもしれません。(※2)
※2:このブログを読んで「マネジメントシステムとは何か」を理解していればその限りではありません。
他社見学の注意点
あなたが見学しようとしている会社のマネジメントシステムは「正しいマネジメントシステム」でしょうか。
認証審査を受けるために構築された「認証用マネジメントシステム」ではありませんか。
認証のためのシステムは「形式的なマネジメントシステム」です。
「こうすれば認証を取れるよ」などと言われても気を付けてください。
うっかりマネをするととんでもないことになります。
その辺の話は「なぜ形式的なISOだダメなのか?」で書いていますが,手間とお金がかかるワリに「認証取得」以外のメリットがなく,そればかりか「余計な手間がががる」「二重管理になり混乱する」「社員のモチベーションが低下する」といった弊害も!
参考にすべきシステムか否かは,その会社との付き合いの深さにもよりますが,偉い人より現場の人の声を聴くと良いでしょう。
現場の人がイキイキとISOに取り組んでいるならまず大丈夫でしょう。
もしくは「特にISOを意識していません。普通に仕事をしています。」といった声が聞かれる場合も上手にシステムが構築されていると思ってよいかもしれません。(※3)
※3:「ISO?なんですかそれ?」くらいまでいっちゃうとさすがにちょっと問題かもしれません(笑)
いずれにしても他社と自分の会社はたとえ業種が同じだとしても会社を運営していくための仕組みやルールは違います。つまり他社のマネジメントシステムとあなたの会社のマネジメントシステムは違うということなのです。
ですから他社を見学するにしても,参考程度にしておいてくださいね。
さて,ISOのマネジメントシステムが何かがわかったら,次は自分たちの会社について理解する番です。
次のお話は「会社の状況を確認しよう(概要編)」です。
いよいよ「要求事項」に踏み込んでいきますよ。