失敗しないISO構築法(その2)―会社の状況を確認しよう(概要編②)
「自分の会社の状況を明確にして,それをマネジメントシステムに取り込む」ということが必要なのはわかったと思いますが,そもそも「会社の状況」ってなんでしょう。
4.1 組織及びその状況の理解
ISOは「『自分の会社』と『会社の状況』を理解しなさい」と言っています。
これは「ISOー会社の目的?課題?」で説明していますが,具体的には「会社が提供する製品やサービスに関して,『品質保証』や『環境改善』などISOのマネジメントシステムによって行うことに影響するような(内外の)課題をはっきりさせましょう」ということなのです。
ここで重要なのは,ISOのマネジメントシステム規格は,それぞれ取り扱う範囲が違うので,ISO9001なら「品質」,ISO14001なら「環境」に関係する「『内外の課題』を明確にしなさい」と言っているだけ,ということです。
会社には「品質」や「環境」以外にも取り組むべき課題はたくさんあって,ISOとは関係なくそれらの課題に取り組んでいるはずです。
もし課題に取り組まずに放置しているような会社は遅かれ早かれ立ちいかなくなるでしょう。
どんな会社にも課題はある
どんな会社でも,少なくとも経営者の頭の中には「取り組まなくてはならない課題」があって,どの課題の優先度が高いかを「経営判断」し必要な指示を行っているはずです。
ISOのマネジメントシステム規格も「マネジメントシステム(=会社を適切に経営するための仕組みやルール)」ですから「まずは取り組まなくてはならない課題を明確にしなきゃね」と言っているだけなのです。
それぞれの規格は会社を適切に経営するための仕組みやルールの中の「品質」や「環境」に関連する部分だけを取り上げているので,その中では「品質(環境)マネジメントシステムの意図した結果を達成する組織の能力に影響を与える」なんて難しい言い回しになっているだけなのです。
つまりISO9001にせよISO14001にせよ「様々な経営課題」の中の「品質」や「環境」に関係する部分にスポットライトを当てているということですね。
みなさんは会社の品質に関するマネジメントシステムや環境に関するマネジメントシステムを強化したいと考えているのだと思います(認証のためだけだよ,という場合でも〇〇マネジメントシステムを導入するということはそういうことです)。
それぞれのマネジメントシステムを強化するということは,まずはそれぞれに関係する課題を明らかにするところから始めましょう,というわけです。
逆に会社の課題を明らかにする際に,「『わが社の製品』『わが社のサービス』の質に係わるような課題」や「『わが社の活動による環境影響』に係わるような課題」という視点で「課題抽出」を行えば,「品質」や「環境」のマネジメントが上手くいくということでもありますね。
課題を明確にする仕組み
では,具体的にどうやって課題を明確にしたらよいのでしょうか。
これはもうそれぞれの会社で異なると思います。
- 定例の経営会議で各責任者からの報告書を審議して今後の取り組みを決める
- 経営会議とは別に品質管理員会や環境管理委員会で審議する
- 社長が営業や総務,現場などの責任者からの報告をもとに決める
あなたの会社ではどうでしょうか。
よくこの要求事項を読んで「なにか経営課題を明確にする仕組み作らなきゃをダメなだな」と考える人がいますが,ちょっとまってください!
経営会議ってなんのためにやってるんですか?社長が各責任者に状況を報告させるのってなんのためでしょう?
皆さんの会社の仕組みを思い起こせばきっと「ああ,あれがそうか!」と思い当たるものがあるのではないでしょうか。
その仕組みの中で「品質」や「環境」に関係するような課題が取り上げられていないのなら今回のシステム構築が良い機会です。そういった課題も確実に取り上げられるようにしましょう。
品質に関するマネジメントシステムや環境に関するマネジメントシステムを強化したいと考えているのですから,そういった課題が取り上げられていないのはおかしいですよね。
認証審査への対応
それともうひとつ,「認証を取得する」ということであれば,「ちゃんと品質や環境に関連する経営課題が取り上げられていますよ」ということを客観的に証明できなければなりません。(※1)
※1:「客観的に証明する」のは認証のためだけではなく,あなたの会社の顧客や世間があなたの会社を評価するのにも必要なことです。「認証」は顧客や世間に代わって審査機関があなたの会社を評価したという証なのです。
「うちの会社は品質や環境に関する経営課題を取り上げています」と言っても本当に取り上げているかを見せなければ信用してもらえません。
審査員としてもそう言われて「ああそうですか。だったらOKですね。」と言って帰るわけにはいかないのです。
そのために何らかの方法で証拠を見せる必要があるのです。
もちろん「課題と取り組み一覧表」みたいなものに取りまとめてもかまいませんし,小さい会社では社長が自ら審査員に「わが社の課題は〇〇で,それに対して△△という取り組みを行っており,定期的に社員に進捗状況を報告させています」のように説明してもかまいません。
課題を明確にしたという証拠が提示できれば,皆さんの会社にあった仕組みで良いのです。
大事なのは会社に役立つ仕組みかどうかということなのです。
そして,「わが社の課題はこれとこれ」ということを明確にできて,それを誰かに見せられる形にすれば,その課題を会社全体で共有しやすくなりますよね。
そうすれば会社全体でその課題解決に取り組みやすくなります。
これもまた「課題に関するマネジメント」のメリットのひとつなのです。
次は「利害関係者のニーズ及び期待の理解」です。