正しいISOマネジメントシステムを伝えるブログになる予定です

ISO―会社の目的?課題?

2021/04/02
 
この記事を書いている人 - WRITER -
ISO9001,ISO14001,ISO/IEC17025のコンサルタント・セミナー講師などをやっています。世の中では「ISOは役に立たない!」という声も聞かれますが私はそうは思いません。世間の誤解を解くため,25年に渡るISOマネジメントシステム事務局,審査員,コンサルタントの経験を活かして「正しいISOマネジメントシステム」を伝えるブログを作りました。

ISO9001やISO14001のしょっぱなの要求事項は,「外部及び内部の課題を決定すること」です。

これはマネジメントシステムを構築するにあたってとても重要なことです。

今回はその話をします。

「外部及び内部の課題」ってなに?

ISOの最初の要求事項を意訳すると

「会社の目的に対して『(品質,環境)マネジメントシステム』で実現したいことに影響する内外の課題を明らかにしなさい」

という感じです。

要するにISO9001やISO14001でやりたいこと,例えば「品質保証」「顧客満足の向上」「環境改善」「法令順守」などに影響してくる内部の課題と外部の課題を明らかにする,ということです。

どんなに順風満帆な会社でも「課題が一つもない」なんてことはないと思います。

こんな感じの課題,皆さんの会社にもありませんか。

外部の課題

顧客の要求(品質向上,値下げ要求),材料(燃料)費の高騰,競合への対応,法令改正への対応,社会情勢の変化

内部の課題

人材(後継者)不足,技術継承,設備の老朽化,歩留まり率,内部留保(資金)の不足

みなさんがISOのマネジメントシステム規格を取り入れて実現しようとする「品質保証」や「環境改善」などに対する課題があるはずです。

ここでいったんISOを忘れて純粋にあなたの会社や職場の「『品質保証』や『環境改善』に対して避けて通れない課題」「解決すべき課題」を考えてください。

「後継者の育成」とか「設備の更新」とか「法規制の強化への対応」とか,いくつかありますよね。

それを頭の片隅に置いといてください。

はい,それじゃISOに戻ります。

難しく考えないこと

ISOは「経営に関するいろいろな項目」の中の「品質」「環境」といったものを取り扱う仕組みやルールですから,ISOで言っている「課題」も会社経営の中の「品質や環境に関係する課題」のことになります。

ISOがあろうがなかろうが会社経営の中の「品質や環境に関係する課題」はあるはずです。

ISOは「それを取り扱うマネジメントシステムだ」というだけです。特別なものではありません。

ここで「品質マネジメントシステム」や「環境マネジメントシステム」で「内部及び外部の課題」ってなんだろう?と難しく考えると混乱しがちです。

でも,そんなことはありません。普通に考えて大丈夫です。

そもそもISOのマネジメントシステムは会社経営のシステムなんですから,経営上の課題を取り扱うのは当たり前です。

そこに「品質」だの「環境」だのがくっついてくるので難しく感じているだけです。

会社の目的とは?

さて,始めに戻ります。

最初の要求事項は「会社の目的に対して~」と言いました。

これは,ISOでは正式には「組織の目的に関連し,」と書かれている部分を意訳したものです。(※1)

※1:ISO9001もISO14001も同じ文言です。

この「組織の目的(会社の目的)」ってなんでしょう。

皆さんの会社の目的って何ですか。あらためて考えてみましょう。

企業理念社是には,「〇〇を通じて社会に貢献します」とか「△△を社会に提供し,豊かな未来を創造します」みたいなことが書かれているでしょう。

でも,やっぱり会社の目的は「お金を稼ぐこと」「儲けること」だ,なんて答える方もいますよね。

「稼ぐ」は,「社会に貢献します」的なものと比べると下世話に感じられるかもしれませんが,民間企業は「利益を出してなんぼ」ですからこれも立派な目的です。

でも,大事なのは「どうやって稼ぐか」です。

どうやって稼ぐ?が重要!

これは会社によって全部違います(同業だと同じかもしれませんけど)。

皆さんの会社では,「〇〇の製造・販売」や「△△サービスの提供」といった活動によって「お金を稼ぐ」のではないですか。

これは会社の「定款」に書かれていると思います。

定款には「~のために次の事業を行う」に続いて「〇〇の製造・販売」や「△△サービスの提供」のような「その会社固有の具体的な活動(事業活動)」が記載されています。

これが会社の目的になります(※2)

※2:定款に経営理念,社是を合わせると目的がもっと具体的になるかもしれません。例えば「わが社の目的は質の高い〇〇を供給することによって,豊かな社会の創造に貢献することである」みたいな感じでしょうか。

ここでもう一度最初の要求事項(意訳した方)を思い出してください。

「会社の目的に対して『(品質,環境)マネジメントシステム』で実現したいことに影響する内外の課題を明らかにしなさい」

でしたね。

つまりこれは,皆さんの会社の目的(「〇〇の製造・販売」や「△△サービスの提供」など)に対してISOのマネジメントシステム(ISO9001やISO14001など)で実現したいこと(「品質保証」や「環境改善」など)に影響するような(内外の)課題をはっきりさせましょう,ということなのです。

言い換えれば「あなたの会社にはいろいろ取り組まなければならない課題があるでしょう?その中の「品質保証」や「環境改善」(=ISOで実現したいこと)に影響するような課題はどれとどれですか?」ということになります。

それが「後継者の育成」とか「設備の更新」とか「法規制の強化」とかのようなものに該当するわけです。

ISO9001だったら「品質保証」のために「技術を後継者に継承しなくてはいけない」とか「老朽化した設備を更新しなくてはいけない」のような感じです。

ISO14001だったら「環境改善」のために「環境配慮型製品の開発」とか「環境法規制の強化に対応できるような体制を整えなくてはならない」のような感じでしょう。

これはそれぞれの会社で違うはずです。

ISO9001やISO14001は,まず最初にこの「外部及び内部の課題を明らかにするところから始めましょう」と言っているのです。

この要求事項は,2015年の改正でISO9001とISO14001に追加されました。

それまではこの「課題を明らかにする」という部分がなかったために,「何に取り組むのかあいまいなままシステム構築を始める」という会社も多かったようです。

今ははっきりと「課題を明らかにしなさい」と言ってくれているので,ここは確実に押さえておきましょう。

この記事を書いている人 - WRITER -
ISO9001,ISO14001,ISO/IEC17025のコンサルタント・セミナー講師などをやっています。世の中では「ISOは役に立たない!」という声も聞かれますが私はそうは思いません。世間の誤解を解くため,25年に渡るISOマネジメントシステム事務局,審査員,コンサルタントの経験を活かして「正しいISOマネジメントシステム」を伝えるブログを作りました。

- Comments -

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


Copyright© Sustainable Management Systems , 2020 All Rights Reserved.