なぜ形式的なISOはダメなのか?
形式的なISOとは?
ISOの世界ではよく「形式的なマネジメントシステム」だとか「マネジメントシステムが形骸化している」なんていうことを耳にします。
それらは「イケないISO」の代表格的な意味で語られていますね。
ではなぜ「形式的なマネジメントシステム」はダメなのでしょうか。「マネジメントシステムが形骸化」しちゃイケないのはなぜでしょうか。
今回はその辺のお話です。
形式的,形骸化とは?
国語辞典によれば「形式的な」は「形ばかりで内容のないさま」,「形骸化」は「実質的な意味を失い,中身のない形ばかりのものになってしまうこと」という意味ですね。
つまりこのようなISOは「形ばっかりで中身がないマネジメントシステム」ということになります。
それは「一応ISOの要求事項は満たしているけれど実際の会社の運営にはあまり関係ないマネジメントシステム」です。
何度かお話しているように「マネジメントシステム」とは「会社を運営(経営)するための仕組みやルール」です。
皆さんの会社にも「就業時間」や「を買うときの手続き」「役割分担」といった基本的なものから「仕事の取り方」や「仕事のやり方」のような商売に直結するものまで様々な仕組みやルールがあると思います。
その中の「品質」や「環境」に関係する部分が「品質マネジメントシステム」であり「環境マネジメントシステム」なのです。
ISO9001やISO14001はそのお手本のようなものです。
ですからそのお手本を使って会社のマネジメントシステムを補完,強化していくのが本来のやり方なのに,「認証取得用の仕組みを作ってしまおう」と考える方がおられるようです。
本来の会社の仕組みとは別に「認証取得用の仕組み,ルール」を作ってしまったら,それは実際の会社運営の仕組みやルールではありませんから,ISOの審査の時に審査員に見せるために別のことをやることになってしまいます。
「なぜそんなことをするのかなぁ」と思うのですが,多くは①手間をかけたくない②認証さえ取れればいい③ISOに回せる人がいない,などの理由から「会社の仕組みやルールには手を入れたくない」と考えることが原因のようです
また,そもそも「マネジメントシステムがなんだかわからない」「要求事項をクリアすればOKと勘違いしている」といった場合もあるようです。
でも会社をきちんと動かしていくためにマネジメントシステムがあるのに,それとは別に「認証取得のためのマネジメントシステム」を作ったらそれは「形ばっかりで中身がないマネジメントシステム」に他なりません。
「認証取得のためのマネジメントシステム」の弊害
審査員にはほめられるかもしれませんが(※1),それ以外のメリットはありませんし,むしろ弊害がたくさんあります。
※1:さすがに今はこんなことをほめる審査員はいませんけど。
①余計な手間が増える
仕事をするためのルールの他にISO用のルールができるので,その分の手間が丸々増えることになります。例えば「今までの帳票とISO用の帳票二つを作らなければならなくなる」など。
②二重管理になり混乱する
会社のルールが二つでき,元々のルールとISO用のルールが混在することで社内が混乱します。「あれ,これはどっちの様式を使うんだっけ?」とか「この作業はISOの範囲に入っているんだっけ?」など。間違いも増えます。
③社員のモチベーションが下がる
もちろんこんなルールに縛られていては社員もやる気が起きないのも当然ですが,もっと怖いのは「忙しいのになんで会社はこんなことをやらせるんだ!?」と,ISOへのモチベーションだけではなく,会社に対する信頼関係もいっしょに下がってしまうことです。
まさに「百害あって一利なし」ですね。
「認証取得のためのマネジメントシステム」は本末転倒
詳しい説明は今回は割愛しますが,ISOの要求事項には「目標を設定する」「内部監査を実施する」「マネジメントレビューを実施する」というものがあって,それぞれ会社を良くしていくための重要な活動です。
それを,認証を取るため,毎年の審査をクリアするために「目標を設定する」「内部監査を実施する」「マネジメントレビューを実施する」のは本末転倒です。
例えて言うならダイエットのために「毎日一万歩歩く」という目標を立てて,それを実施しているうちに目標をクリアすることが重要になってしまい「小刻みに歩いて歩数計のカウントを進める」ようなものです。これではダイエットにはなりませんね。
「会社を良くする」「企業イメージを向上させる」そして「お客さんや社会からの信頼を得る」「商売繁盛」というのが本来の目的なのに,「認証取得のためのマネジメントシステム」は「中身がない」本末転倒なシステムなので「イケない」「ダメな」システムなのです。