ISO ― 何のための取り組みか?(次にやるべきこと)
ISOでなにをやりたいのか?
「マネジメントシステム」を理解したら次にやるべきことは「ISOを使ってなにをやりたいのか」を明確にすることです。
それはつまり「何のためにマネジメントシステムを構築するのか」ということでもあります。
さて,皆さん(の会社で)はどうでしょうか。
ISO9001なら「顧客の信頼を得たい」「製品やサービスの質を高めたい」「顧客満足を向上させたい」あたりでしょうか。
ISO14001だったら「環境保全に取り組みたい」「企業イメージを向上させたい」「環境汚染や法令違反等のリスクを回避(低減)したい」などが考えられますね。
さらには「昨今の環境保全の社会的風潮を事業発展に活かしたい」なんていうこともあるかも。
また,中には「認証を取りたいから」という方もいるでしょうか。
実際「認証取得が目的」という会社は少なくありません。
管理責任者の方や社長さんへのインタビューでは,本音は「認証が取れればいいや」でも,後ろめたい気持ちでもあるのか「経営体質を強化したい」「社会貢献をしたい」という答えが返ってくることがあります。
でも何も後ろめたいことはありませんよ。
認証取得が目的だっていい
「認証取得が目的」だとしても「なぜ認証を取得したいのか」はあると思います。
これもやはり「認証を取得して企業イメージを向上させたい」だったりしませんか。
「企業イメージを向上させる」ということは,ISO9001であれば「お客さんが満足するような製品やサービスを提供すること」でしょうし,ISO14001であれば「環境負荷を低減させること」や逆説的にいえば「環境汚染を起こして企業イメージをダウンさせない」ということです。
もしかしたら認証取得の理由が「取引先からの要請」だったり,「入札での加点が欲しい」だったりするかもしれません。
でも,「なぜ取引先が認証取得を要請するのか」「なぜ認証を持っていると入札で加点されるのか」を考えると,その理由は「取引先が要求する品質の製品やサービスを提供して欲しい」「環境負荷を低減させるような会社,環境汚染を起こさない会社であって欲しい」からでしょう。(※1)
「認証を取得する」ということは,このようなことができる(マネジメントシステムを持った)会社であることが証明されることです。
と,いうことは,「認証を取得したい」はイコール「そのような会社になりたい」ということなのですから,何も後ろめたいことなどありません。
ただし,それは「正しいマネジメントシステムを構築し運用すること」が大前提です。
※1:取引先がISOのマネジメントシステムを運用している場合,「あなたの会社の評価を簡単に済ませたいから」ということもあります。でもなぜあなたの会社を評価するかといえば,ISO9001やISO14001が「外部提供者を評価して適切な会社と取引しなさい」と要求しているからです。それは結局は取引先が「適切な会社であることを証明して欲しい」と望んでいることと同じです。
そもそもISOは何のためのものか―序文や適用範囲がとても大事!
ISO9001やISO14001の序文や箇条1の「適用範囲」にはこれらの国際規格が「どのような目的で作られているか」「どんな会社のためのものか」が書かれています。
ほとんどのISOマネジメントシステム規格は,「~しなければならない」という具体的な要求事項は箇条4から始まります。
なので私もそうだったのですが,「マネジメントシステムを構築する=要求事項を満たす」と単純に考えていると序文はもちろん箇条1と2はすっ飛ばして(※2)箇条4から読み始めてしまう人が多いのです。
※2:箇条3は用語の定義なのでとりあえず目は通す
ところが序文や箇条1の適用範囲にはとても重要なことが書かれていて,これを頭に入れてから要求事項に取り組まないととんでもない過ちを犯すことになりかねません。(※3)
※3:私はやらかしました(笑)
序文には「この規格を利用(してマネジメントシステムを構築し運用)することによってこういう(メリットを得る)ことができますよ」ということが書かれています。
そして箇条1の適用範囲には「この規格はこのようなことを望んでいる(やりたいと思っている)会社に使ってもらうためのものですよ」ということが書かれています。
ちょっと紹介すると(意訳してます),
ISO9001は①お客さんの望む製品やサービスをきちんと提供できることを証明したい②お客さんの満足度を向上させたい会社が使うのもの。
ISO14001は①環境負荷を減らしたい②環境法令をきちんと守りたい③環境と利益を両立させたい会社が使うもの。
という感じです。
皆さん(の会社)はどうですか。
あらためて考えてみれば今まで話したことのどれかが該当しているのではありませんか。
もし,「いや,うちの会社は違うな」というのであれば,使う(認証を取ろうとしている)マネジメントシステム規格を間違っているのかもしれませんよ。その場合はもう一度確認してみてくださいね。(※4)
※4:たま~に環境影響があまり大きくないのに無理してISO14001の認証を取ろうとしている会社を見かけることがあります。人間活動は大なり小なり環境影響を伴うのでISO14001が無駄とは言いませんが,他の規格でもっと必要なものがあるのでは?と思った事があります。
「ISOを使ってなにをやりたいのか」を忘れないこと!
ISOにはいろいろな要求事項があります。そしてそれはとても難解です。
ですからシステム構築に取り組んでいると「この要求事項はうちの会社では何をやったらいいんだろう」とか「どこまでやったらいいんだろう」などと悩むことが良くあります。
そんなとき「認証を取ればOK」だけで「ISOを使ってなにをやりたいのか」が曖昧だと,ただ要求事項を満たすことに気をとらわれて,「こういうルールにしておけばとりあえず要求事項はクリアできる」とよけいな仕組み,ルールを作ってしまいがちです。(※5)
※5:作りました(笑)これをやると作業効率が悪化したり,みんなが付いて来なくなったりします(涙)
悩んだとき,迷ったときには「ISOを使ってなにをやりたいのか」を思い出してください。
「とりあえず要求事項をクリア」ではなく「良い製品やサービス提供するには」「お客さんに信頼してもらうには」「環境負荷を減らしてなおかつ利益を得るには」「法令に漏れがないようにするには」というふうに具体的な目的を思い出してください。
そして,大事なのはここで理想を追求するのではなく「現状ここまでならできる」という「落としどころ」を見つけてください。
ISOはマネジメントシステムなのですから,会社の経営を圧迫してまで「良い品質」や「環境配慮」に取り組むことは要求していません。
あなたの会社が「これは大事」と思うことをやれば良いのです。
そうすれば少なくとも「とんでもない仕組み」「誰も守らないルール」みたいなものはそうそうできないでしょう。
道に迷ったら「ISOはマネジメントシステム」「ISOを使ってなにをやりたいのか」を思い出す
これからISOに取り組む皆さんは,ISOの要求事項に取り組む中でこの後何度も「ちょっと何言ってるかわからない((c)サンドウィッチマン)」と頭を抱えることになるでしょう。
そんなとき必ず「ISOはマネジメントシステムである」ということと「ISOを使ってなにをやりたいのか」を思い出してください。
「〇〇しなければならない」と書いてあるけど,「会社が質の高い製品やサービスをお客さんに提供するため」「会社と環境を両立させるため」には今のままのルールで大丈夫かな?少し直す必要があるのかな?と考えてみてください。
そうすれば進むべき方向が見え,間違った方向へ迷い込んでしまうことはないでしょう。
次回は「認証取得」についてお話します。